マンション経営では、大規模修繕工事へ向けた積み立てをはじめ、毎年かかる固定資産税など、必要なランニングコストを適切に把握しておかなければなりません。

この度「令和6年度の税制改正の大綱」が発表され、

固定資産税の軽減措置の適用期限が令和8年3月31日まで延長

マンション経営に挑戦したい方にとっては、資金計画がさらに立てやすくなりました。

本記事では、マンション経営にも深くかかわる固定資産税の軽減措置について、詳しく解説します。すでにマンション経営をしている方、これから始めようと考えている方、どちらの方にも有益な情報ですので、ぜひ参考にしてください。

固定資産税とは

固定資産税とは所有する土地や建物、会社の備品といった

償却可能な資産に対して課せられる税金のこと。

マンションを建築すると、取得の翌年から建物と土地に対する固定資産税の納付義務が課せられ、毎年1月1日時点での所有者が対象となります。

固定資産税は、所有する不動産のある市町村に納める地方税。

なお東京23区に不動産を所有している場合は、都税として東京都に納めます。

固定資産税の算出方法

固定資産税は、およそ3年毎に評価される「固定資産税評価額」をもとに計算します。

自治内によって税率は異なるものの、標準税率とされる1.4%を採用し、以下のように計算するのが一般的です。

固定資産税=固定資産税評価額×1.4%

固定資産税は建物と土地それぞれに課せられ、土地と建物を合算したものが、固定資産税として支払う金額です。

固定資産税評価額は、毎年送付される納税通知書内の「課税明細書」に記載されています。

さらに、所有するマンションが市街化区域内にある場合は、固定資産税と合わせて

「都市計画税」も課せられます。

都市計画税は使用目的が定められた「目的税」の一種。

上下水道や公園・緑地などの公共空地、さらには道路や都市高速鉄道といった交通施設の整備が主な用途です。

都市計画税の標準税率は0.3%で、固定資産税と同様に「固定資産税評価額」を基準に計算します。

都市計画税=固定資産税評価額×0.3%

総務省によると、令和4年4月1日時点で都市計画税を課税する市町村は

全体の3分の1を越えており、都市整備における大切な財源の1つとなっています。

住宅用地の特例措置

住宅用地にかかる固定資産税には、負担を軽減するために特例措置が適用されます。

軽減される割合は「小規模住宅用地」「一般住宅用地」で区別され、内容は以下の通りです。

土地区分特例措置内容
小規模住宅用地(一戸あたりの面積が200㎡以下の住宅用地)固定資産税=固定資産税評価額×1/6都市計画税=固定資産税評価額×1/3
一般住宅用地(一戸あたりの面積が200㎡を越える住宅用地)固定資産税=固定資産税評価額×1/3都市計画税=固定資産税評価額×2/3

基準となるのは住戸1戸あたりの面積のため、たとえば戸数が10のマンションなら、200㎡×10=2,000㎡まで6分の1の軽減措置が適用されます。

住宅用地の特例措置は、固定資産税と都市計画税の両方が対象です。

適用期間の制限もなく、ほとんどの住宅で適応されています。

固定資産税の支払い方法

固定資産税は、毎年4月~5月に「固定資産税通知書」が送付され、年4回の分割払いか一括払いかを選択できます。

なお一括払いでの納付を選択しても、割引は適応されません。

支払い方法は、窓口による現金決済や口座振替のほか、各種アプリを使用したオンライン決済も選択可能です。

使い勝手に合わせて、支払い方法を選びましょう。

【2024年最新】固定資産税の軽減措置が2年間延長!

固定資産税で注目したいのが、以下の要件を満たすと適用される

「新築住宅特例」という軽減措置です。

住宅部分の床面積が50㎡以上280㎡以下(一戸建て以外の賃貸住宅の場合、40㎡以上)

参考 | 大阪市「新築された住宅に対する固定資産税の減額措置」

国土交通省によると、新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置は「良質な住宅の建設を促進し、居住水準の向上及び良質な住宅ストックの形成を図るため」に行われています。

これまで新築住宅特例の対象は「令和6年3月31日までに新築された住宅」でした。

しかし令和6年度税制改正の大綱で、対象を「令和8年3月31日までに新築された住宅」にすると発表され、適用期限が2年間延長されています。

<一般住宅分>

住宅の種別期間減額割合
一般の住宅新たに課税される年度から3年間2分の1
3階建以上で耐火構造の住宅新たに課税される年度から5年間

<長期優良住宅分>

住宅の種別期間減額割合
一般の長期優良住宅新たに課税される年度から5年間2分の1
3階建以上で耐火構造の長期優良住宅新たに課税される年度から7年間

※一般住宅分・長期優良住宅分ともに、居住部分にかかる床面積は120㎡が限度対象(120㎡を越えるものは120㎡相当分まで)

※参考 | 総務省「固定資産税」

新築住宅特例により、新築住宅にかかる固定資産税は3年間。

マンションは5年間にわたって、固定資産税が2分の1に減額されます。

また認定長期優良住宅の場合、軽減期間は5年間(マンションの場合は7年間)です。

なおこの特例は、固定資産税のみ対象です。

都市計画税は対象外ですので、注意してください。

固定資産税の軽減措置の注意点

固定資産税の軽減措置は、申告しなければ適用されません。

軽減措置を受ける際の注意点を、2つ解説します。

市区町村の窓口に申告書を提出する

固定資産税の軽減措置を受けるためには、不動産取得の翌年1月31日までに、

所有者自ら市区町村の窓口に申告書を提出しなければなりません。

住宅用地の特例措置を受ける場合は、土地を管轄する市町村役場に

「固定資産税住宅用地申告書」を。

新築住宅特例を受けるなら、同じく市町村役場に

「固定資産税減額申告書(新築住宅)」を提出します。

不動産を取得した翌年の1月31日を過ぎると軽減措置を受けられなくなるため、注意してください。

納税通知書をチェックする

固定資産税を納付すると、納税通知書が送付されます。

手元に届いたら必ず開封し、「課税明細書」をもとに内容に誤りがないかを確認しましょう。

特に注意すべきなのは、以下の3つの項目です。

  • 「地目」が合っているか
  • 土地の軽減措置が適用されているか
  • 建物の軽減措置が適用されているか

地目とは土地の用途を記したもので、田畑や宅地などの種類が記載されます。

この地目が誤っていると、固定資産税の基準となる固定資産税評価額が正しく算出されないため、注意が必要です。

固定資産税の軽減措置は、住宅の種類や土地面積など細かな条件があるため、納税通知書を見て正しく申請ができているか確認するのがおすすめ。

万が一誤りがあったときは市区町村役場に問い合わせ、内容の見直しを依頼しましょう。

2024年以降も固定資産税の軽減措置を生かした賢いマンション経営を

固定資産税は、あくまでマンション経営のランニングコストの一部分です。

しかしマンション経営の中でも毎年必ずかかる必要経費のため、申請できる軽減措置はできる限り活用するのがおすすめです。

制度を活用しながら、賢いマンション経営を目指しましょう。

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