なぜアスベストは危険なの？大規模修繕工事での調査の義務化について

2022年4月の法改正によって、一定規模以上の工事を実施する際には、アスベスト調査の実施が義務化されています。世間一般でも「アスベストは危険」と言われているので、何となく危険であることは知っているものの、何故危険なのかについて認識できていますでしょうか？本記事では、アスベストの持つメリットとデメリット(危険性)について紹介します。

アスベスト（石綿）とは？

アスベストとは、自然に生成される天然の鉱物（ケイ酸塩鉱物）です。

直径が髪の毛の約50分の1程度と、肉眼では見えないほど非常に細かい繊維で構成されており、繊維同士が絡み合うことで「高強度」「柔軟性」「耐熱性」「不燃性」「耐薬品性」「電気絶縁性」「耐摩耗性」等の様々な効果を発揮します。

露天掘りで大量採掘・生産が可能で安価だったこともあり、「奇跡の鉱物」と称され、幅広く使用されてきました。

特に1970年代から1980年代に建てられた建物では、主に以下の部分にアスベストが含有された建材が使用されていました。

• 鉄骨への吹き付け：耐火被覆材として
• 屋根材や外壁材：スレート板、窯業系サイディングなど
• 配管の保温材：ボイラーやダクト周り

環境省：石綿に関する基礎知識

アスベストが危険な理由

自然生成され、採掘が容易で、様々な工業製品に用いることが可能な万能素材のアスベストですが、1970年代からとある危険性が問題視され始めました。

それが「肺がんや悪性中皮腫を引き起こす可能性」というもの。空中に飛散した細かい繊維を吸い込んでしまうことによって、呼吸機器に悪影響を引き起こしてしまうのです。アスベストは非常に細かいため、吸い込んでしまった際に肺が傷むなどの症状が起きにくく、さらに「潜伏期間が20～40年以上と非常に長い」ことも問題でした。

施工や解体時に飛散したアスベストによって、数十年後に肺がんになる可能性が危惧されたのです。

世界保健機関（WHO）でもアスベストの有害性を指摘しており、2000年代に入ってから欧州連合(EU)をはじめ、全面禁止する国が増加しました。

WHO：アスベストに関する重要な事実(原文)

大規模修繕とアスベストの関係性

アスベスト調査の実施義務の基準は、以下の通りに定められています。

解体工事では床面積が80㎡以上、改修工事では請負代金が100万円以上の規模

※アスベスト含有建材に作業を行う場合、工事規模に関わらず、労働者の安全確保のために事前調査が推奨されています

大規模修繕工事では請負代金が100万円以上になることがほとんどであり、ほとんどの場合、アスベスト調査を実施する必要性があります。

アスベスト調査を怠ったり、虚偽の報告をした場合、大気汚染防止法に基づいて30万円以下の罰金が科せられます。

環境省：石綿の事前調査結果の報告及び電子システムによる報告の概要

アスベスト調査の進め方

アスベスト調査には建築物石綿含有建材調査者という国家資格が必要であり、アスベスト含有建材の除去・封じ込め作業を行うには、石綿作業主任者の資格保有者が現場指揮・監督をする必要があります。

厚生労働省：石綿総合情報ポータルサイト

そのため大規模修繕工事を依頼する際には、アスベスト調査と除去・封じ込め作業どちらも対応できる業者を選ぶことが必要不可欠となります。対応しているか否かについては、会社HPの「会社概要」や「保有資格一覧」等に掲載されている場合がほとんどです。

アスベスト調査の手順

アスベスト調査は数多くの手順、やらなければいけないことがありますが、大きく分けると以下の手順で進めることになります。

①建物の着工日を確認する

まずは建物の着工日が、2006年(平成18年)9月1日以降であるかどうかの確認を行いましょう。法律で使用が禁止された日のため、これより着工日が新しい場合には、アスベストが使用されていないと言えます。

建物の正確な着工日は、不動産登記事項証明書（登記簿謄本）に記載されています。法務局に行くか、オンライン請求することで入手が可能です。

厚生労働省：アスベスト全面禁止労働安全衛生法施行令が改正され、平成１８年９月１日から施行されました

②現地での目視調査、事前調査が必要であるかの確認

アスベストを含む壁や天井から釘を1本抜くだけでも、アスベスト工事と見なされ、調査が必要な対象工事となります。そのため、アスベスト含有の可能性がある建材であるかどうか等を慎重に判断する必要があるのです。

③事前調査の実施

使用されている建材の製品特定、試料を採取して分析を行うなどし、アスベスト含有量を調査します。

④行政への報告の実施

実際にアスベストが使われていたか、その量などに関する報告を行います。

※解体工事では床面積が80㎡以上、改修工事では請負代金が100万円以上の規模。この基準に当てはまる場合は、アスベスト含有の有無に問わず報告が必要となります

まとめ

アスベストそのものは人体に害を及ぼす危険な物ですが、今でも断熱材として建物内部に多く使われています。アスベストに関する知識をしっかりと身につけ、正しい付き合い方をしましょう。本記事が皆様の建物管理・修繕計画の手助けとなれば幸いです。

トゥインクルワールドではアスベストの専門知識、資格を保有したスタッフが多数在籍しております。気になる事、お悩み事などございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

更新日: 2025.12.23 　公開日:2025.12.24