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お役立ちコラム
更新日: 2025.06.25
2025年6月、建設現場における熱中症対策が法的義務化されました。WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上or1日4時間を超えた作業は、対策を講じなければなりません。この記事では、義務化の具体的な内容から、現場の工程をスムーズに進めるための対策、さらには、安全な施工業者を見抜くためのポイントまで解説します。法令遵守と安全な現場運営を実現し、建設プロジェクトを成功に導きましょう。
・建物管理・保有されている方
・管理している建物が既に着工中の方
・現場トラブルを避けたい方
目次
近年の気候変動により、夏季の気温上昇が顕著になり、建設現場での熱中症リスクは年々高まっています。熱中症は、作業員の健康を脅かすだけでなく、労働力の低下や作業効率の悪化、さらには工期の遅延やコスト増加にもつながりかねません。
気象庁のデータによると
2024年の日本の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差は+1.48℃で、1898年の統計開始以降、2023年を上回り最も高い値となりました。日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.40℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。
引用:気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
このような状況を受け、国は建設現場における熱中症対策を強化する必要があると判断し、今回の義務化に至りました。厚生労働省:~職場における熱中症の重篤化を防ぐため、労働安全衛生規則が改正されました~
義務化の対象となるのは、「WBGT28度以上、又は気温が31度以上の環境下で連続1時間以上、又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業です。
熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられます。
屋外での建設作業はもちろんのこと、換気が不十分な屋内作業も含まれます。熱中症は、高温多湿な環境下や、体温調節機能が低下している場合に発症しやすいため、作業環境の適切な管理が求められます。
WBGT基準値とは、ISO(国際標準化機構)によって定められた熱中症の危険度を示す「暑さの目安」です。主に、湿度、日差し(輻射熱)、風の3つの要素を組み合わせて計算されます。
WBGT基準値は、その日の暑さが「どのくらい体に負担をかけるか」を総合的に判断し、「ここまでなら運動や作業をしても比較的安全」「これ以上だと危険だから注意が必要」という、具体的な行動の判断基準を示してくれます。
たとえば、WBGTが「31℃以上」になると「運動は原則中止」といったように、具体的な活動の目安が示されています。
建設現場の熱中症対策義務化に対応し、現場工程をスムーズに進めるためには、事前の準備と計画が不可欠です。ここでは、現場工程を円滑に進めるための具体的な対策について解説します。
まず作業開始前に、熱中症のリスク評価を行うことが重要です。作業場所のWBGT(湿球黒球温度)を測定し、作業内容、作業時間、作業員の健康状態などを考慮して、熱中症のリスクレベルを評価します。リスクレベルに応じて、作業の中止や休憩時間の確保、作業員の配置変更などの対策を講じます。リスク評価は、定期的に行い、その結果を記録に残しておくことが大切です。これにより、対策の効果を検証し、改善を図ることができます。
リスク評価の結果に基づいて、具体的な熱中症対策計画を策定します。計画には、水分補給の徹底、休憩時間の確保、適切な服装の推奨、作業場所への日陰の設置など、具体的な対策内容を明記します。また、緊急時の対応についても、明確にしておく必要があります。熱中症を発症した際の応急処置や、医療機関への連絡方法などを定めておきましょう。計画は、全ての作業員に周知徹底し、常に最新の情報に更新することが重要です。
作業員の健康管理体制を構築することも、現場工程をスムーズに進めるために不可欠です。まず、作業員の健康状態を把握するために、健康チェックを実施します。体調不良の作業員は、無理をさせずに作業を中断させ、休息をとらせる必要があります。また、作業員の熱中症に関する知識や意識を高めるための教育・研修を実施します。水分補給の重要性や、熱中症の症状、応急処置などを学び、自己管理能力を高めます。さらに、作業員の健康状態を記録し、定期的に見直すことで、より効果的な健康管理体制を構築できます。
熱中症対策は、高額な費用をかけなくても、効果的に実施できるものがあります。まず、作業員の水分補給を徹底することが重要です。十分な量の水やお茶を現場に用意し、こまめな水分摂取を促しましょう。経口補水液や塩分タブレットも効果的です。
次に、作業服の工夫です。通気性の良い素材や、吸汗速乾性のあるインナーウェアを着用することで、体感温度を下げることができます。また、作業場所への日陰の設置も有効です。日傘やテント、タープなどを活用し、直射日光を遮ることで、熱中症のリスクを軽減できます。これらの対策は、比較的安価で導入でき、効果も期待できます。
費用を抑えた対策に加えて、より効果的な対策も検討しましょう。まず、WBGT(湿球黒球温度)計を設置し、こまめに計測することで、作業環境の危険度を把握します。WBGTの値に応じて、作業の中断や休憩時間の延長などの措置を講じます。
次に、空調服や冷却ベストなどの着用です。体感温度を大幅に下げることができ、熱中症のリスクを低減できます。ただし、これらの機器はバッテリー切れに注意し、定期的なメンテナンスが必要です。
またミストシャワーや送風機の設置も効果的です。気化熱を利用して体感温度を下げ、涼しい環境を作り出すことができます。
対策を十分にとっていても、熱中症になってしまう可能性は十分にあります。適切な処置法を事前に知っておくことで、重篤化を防ぐことが可能です。まずは以下の症状が無いかチェックしましょう。
めまい・失神・筋肉痛・筋肉の硬直・大量の発汗・頭痛・不快感・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感・意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温
そして次に「呼びかけに応じるか」「水分を自力で摂取できるか」を確認しましょう。これらが確認できない場合は、ためらわず救急車を呼びましょう。
救急車が到着するまでの間に、呼びかけを行うなど、以下の応急処置を行うことが大切です。
氷のう等があれば、首、わきの下、太ももの付け根を集中的に冷やしましょう。
スポーツや労働の場での労作性熱射病(何らかの意識障害)が疑われる場合は、全身を氷水(冷水)に浸ける「氷水浴/冷水浴法」が最も体温低下率が高く、救命につながることが知られています。そのような準備がない場合には、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨されます。
※必ず医療有資格者を事前に配置し、直腸温を継続的にモニターできる人的・物的環境が整った状況で実施して下さい。
熱中症を発症している場合、記憶障害や呂律が回らない等の理由から、自分で症状を説明できない場合が多いです。
又、医療機関到着時に、熱中症を疑った検査と治療が迅速に開始されるよう、その場に居あわせた最も状況のよくわかる人が医療機関まで付き添って、発症までの経過や発症時の症状等を伝えるようにしましょう。
※情報が十分伝わらない場合、(意識障害の患者として診断に手間取る等)、結果として熱中症に対する処置を迅速に行えなくなる恐れもあります。
建設現場における熱中症対策の義務化以外にも、他にもさまざまなルールや決まりごとが義務付けられています。これらを守らない場合、法令違反となり、作業工程に大幅な遅れが発生する可能性があります。管理会社として、どのような点に注意し、どのような対策を講じるべきか、未然に防ぐためのポイントをしっかりと理解しておく必要があります。
建設現場では、高所作業における墜落災害を防止するために、安全帯の使用が義務付けられています。
安全帯の使用方法に関する教育を定期的に実施し、作業員の知識と技能を向上させることも重要です。誤った装着は、墜落時の衝撃を十分に吸収できず、重大な事故につながる可能性があります。安全帯の正しい使用は、作業員の安全を守るだけでなく、法令遵守の観点からも非常に重要なポイントです。
建設現場では、特定の作業や熱中症対策のために資格や講習の受講が義務付けられています。
熱中症予防や応急処置、または安全管理に関する講習や資格は、作業員の安全意識を高め、事故のリスクを低減し、法令遵守を果たす上で不可欠です。管理会社は、作業員が必要な資格を確実に取得しているか確認し、未取得者には速やかに受講を促すべきです。
法令遵守のためには、適切な安全管理体制の構築が不可欠です。
役割分担を明確にし、安全管理者や現場監督者の責任の所在を明らかにすることで、問題発生時に迅速に対応できます。リスクアセスメントを定期的に実施し、熱中症を含む潜在的な危険を特定して対策を講じ、安全ルールを作業者に周知徹底しましょう。また、安全記録を適切に保管・分析し、安全管理体制を継続的に改善することが、法令遵守と安全な現場運営を実現する上で最も重要です。
管理会社やオーナー様にとって、適切な施工業者を選ぶことは、熱中症対策義務化への対応だけでなく、安全な現場運営、コスト削減、そしてプロジェクトの成功に不可欠です。ここでは、施工業者を選ぶ際に着目すべきポイントを、具体的な視点から解説します。
施工業者の安全管理体制は、熱中症対策を含む現場の安全性を左右します。安全管理体制図の有無、安全管理者の配置、安全パトロールの実施状況を確認することで、担当者の役割や責任範囲が明確になり、問題発生時のスムーズな対応や危険箇所の早期発見につながります。また、過去の事故発生状況や表彰歴は、業者の安全意識と取り組みを示す重要な指標です。
建設業許可の有無、定期的な法令研修の実施、過去の法令違反事例の有無とその対策、協力会社への法令遵守指導状況を確認することで、プロジェクトの遅延や法的リスクを回避できます。
施工業者の技術力や専門性を判断する上で、特定の作業に必要な資格は、質の高い施工と法令遵守を保証する重要な要素となります。
今回の義務化は、建設現場で働くすべての人々の健康と安全を守るためのものです。管理会社、オーナー様が適切な対策を講じることで、労働災害を減らし、法令遵守を実現できます。その結果、プロジェクトの遅延やコスト増加を防ぎ、建設プロジェクトを成功に導くことができるでしょう。
更新日: 2025.06.25 公開日:2025.06.25
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